予測可能な予測不能性
素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術 (PHP文庫)
- 作者: 金出武雄
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2004/11
- メディア: 文庫
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本箱に入ってた上の本をもう一度読み直してたら新しい発見をした。今後考えていきたい問題なので長いけど「引用」しておこう。
私はこの「予測可能な予測不能性」が、人が他人やコンピュータを「感情がある」とか、「個性的である」と思うかどうかの判断基準であると考えている。
例えば、「感情がある」という語句を考えてみよう。笑ったり泣いたり怒ったりの顔の表情をスクリーンに表示することのできるコンピュータプログラムがあったとしても、それだけでは、人は誰もそのコンピュータに感情があるとは思わないだろう。
つぎに、人が何か文章をタイプ入力すると、コンピュータはそれに反応をして表情を出したとする。その時、自分がこう入力したらこういう表情をするのではないかとの予測どおりの反応をコンピュータがすると、「決まりきった反応をする」との印象を受けて、やはり感情があるとは思わない。
では、ただ、人の予想をはずせばよいかというとそうでもない。プログラムが単に乱数を使ってでたらめに反応すると、今度は、「自分の入力に無関係の表情をする」との印象でやはり感情があるとは思わない。つまり、反応は予測不能であると同時にある一定の予測範囲内になければならないのだ。
人間対人間でも同じではなかろうか。他人とまったく同じ言動をする人は個性的でないという。しかし、違えばよいと言っても、それがある許容範囲を越えると、それは異常性格ということになってしまう。もちろん、許容範囲は時とともに変わっていくが。
予測可能な範囲内での予測不可能性を作り出せるかどうかが、「人のようであるか」のキーなのだ。
pp.143-144
要するにAIを実現するには規則性とランダム性の微妙な中間段階を実現する必要がある。あーもちろん規則的な方法で。これは内発的動機づけ(2005/7/6)と並んでAIの根本に位置する重要な問題だと思うのだけれど。
これができるとゲームAIへの応用などいろいろ使えそう。ヒューマンエージェントインタラクションの研究で議論されてそうな予感。
この本は2年前に一度読んだだけなのに2年後になって同じ興味が自然にわいてきた。覚えてないけどもしかしたらこの本が興味の元ネタだったのかもしれない。無意識下の能力の涵養(2005/7/30)とはすごいものだ。
関連リンク
- 偶有性(2005/12/16)
- なぜ世界は予測できないのか?(2006/1/26)
- ランダムの中の規則性(2006/4/25)