ネットワークを渡り鳥するプログラム
下原勝憲: 人工生命と進化するコンピュータ
下原さんの論文に面白い話が載っていたので引用。
現在、我々は、ティエラをネットワーク型に拡張し、インターネットなど地球規模のコンピュータ・ネットワーク上でのソフトウェア進化の実験を進めている。
世界中の多くの人々がかかわる動的な環境としてのインターネットは間接的にディジタル生物(コンピュータ・プログラム)に自然でかつ変化と複雑性に富む環境を与えることができる。多くの人々がコンピュータを利用している間は、ディジタル生物に与えられる計算時間もメモリ空間も限られる。従って、そのような厳しい環境でも適応できるものしか生き残れない試練のときとなる。しかし、人々が帰宅してコンピュータを利用する人が居なくなると、今度は計算時間もメモリ空間も最大限利用でき、ディジタル生物にとってはまさに天国となる。競争のない豊かな環境でディジタル生物はサバイバルに直接かかわらない機能を育むことができる。
そのようなことが日々、しかも、世界中のコンピュータの中で繰り返される。ディジタル生物はインターネットで結ばれたコンピュータ間を自由に移動することもでき、より豊かな計算時間とメモリ空間を求めて絶えず地球の裏側(夜側)に向けて移動することが予想される。
このような考え方は魅力的に感じた。今でもWWWロボットみたいなのはネットワーク中を渡り歩いているのだろうけど、もっと知的になったら面白いと思う。
コンピュータウィルスの撲滅なんかもまかせられるかもしれない。逆にこれが凶悪ウィルスになるかもしれないけれど。ティエラを作ったトマス・レイもこれが心配で仮想マシン上で実行したそうだ。
それにWWWロボットの作り方が公表されないのも過度にインターネットに負荷をかけないためとも聞いたことがある。こういう実験をインターネット上でやるのはまずいかもしれないけれど、考え方は非常に面白い。