クロフォードのゲームデザイン論
クロフォードのゲームデザイン論(リンク切れ)ってのを読んでいたところゲームAIに関する面白い記述があった。
それぞれのゲームにあわせて簡易的な人工知能ルーチンを組むというテクニックが使われる。そういったルーチンは、人工知能と呼ぶにはあまりに原始的で単純であり、私はそれを「人工痴脳」 (Artificial Smarts) と呼んでいる。
人工痴脳(AS)の設計では2つの相反する機能が必要になる。
- ユニットに合理的な動きをさせる
- 人間にパターンを読み切られてはいけない
ASが非合理的な行動をとると興ざめしてしまう。たとえば、即死するはずがない最終ボスに即死呪文をかけ続けるとか*1(笑)このような行動を防ぐためにはif-thenルールなどで対応するのが一般的なようだ。
ただこのようなルールを作ってしまうと行動がパターン化してプレイヤーに読みきられてしまうのだ。
これに対するクロフォードの回答は非常に興味深い。少し長いけど引用しておく。
この表面上の矛盾は、ゲームにおける相互作用というものを深く考察することで解消されるだろう。(中略)ゲームは、二枚の合わせ鏡に喩えることができる。互いのプレイヤーは、それぞれの鏡を覗き込んでいるのだ。パズルは2枚の鏡が全く互いを映していない状態である。プレイヤーは静止した自分の顔を見ることだろう。多少なりともインタラクティブ性があれば、鏡は何度か反射して何人もの自分と対戦相手を映すに違いない。最高にインタラクティブな(つまり最高に「ゲーム度」の高い)ゲームでは、合わせ鏡は無限の像を映す。どちらのプレイヤーがちょっと違う動きをすれば、鏡に映る像は全く違うものとなるだろう。どんなに定跡だけを打っていても、無限に複雑な予測と予測の重なり合いが起きてその結果は全くわからないものとなるのだ。これこそ、合理的でかつ予測不能ということなのである。
クロフォードのゲームデザイン
クロフォードは、現在(執筆時の1982年)ではこのような機能を実装するのは難しいと示唆し、代替案を検討している。だが今はどうだろう。オセロとか将棋といった思考ゲームはこの基準を満たしてるだろうけれど。
人工知能の研究対象としてビデオゲームが面白いのはこのあたりだ。
*1:何を言ってるかわからない方は、クリフトのばかぁ〜!!(リンク切れ)へどうぞ