人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

機械の感情

以前から考えてた感情の意味について面白い説明があったのでメモっておきたい。

わたしの意見では、感情とは定型化された行動パターンで、それが生存価を持つことが証明されたために、自然淘汰を通じて強化されたものだ。明らかに、怒って闘ったり、怖がって逃げたりする動物は、何も感じず何もせずに食われてしまう動物よりも無事でいる可能性は大きい。

未来の二つの顔、p.88

感情とは何か(2003/10/23)で感情の持つ機能について少しまとめてあった。上で引用したように怒りとか恐怖は生存に役立つのは直感的に理解できるが、その他の悲しみ、幸福、自尊心、妬み、嫉妬なども生存にとって何らかの役割を果たしているのだろうか。

きみがいうのは、無機的な知能もそれなりの衝動的な性格を生じるかもしれないが、それが人間の感情に少しでも似たところがあると考える理由はないということだな。われわれの感情は生存の必要から生じたものであり、まったく別の起源を持つシステムにとっては何の内在的な価値もないだろうというわけだ。

同、p.89

愛情と目標(2005/09/24)でも少し触れたが、人間の持っているような感情を機械が出せるように表象的にシミュレートするのは面白いとは思うがちょっと物足りない。

本当に面白いのは、何らかの根本原理(生存とか)を与えたときに知的な機械が返す反応だ。この小説では、「電源」を人工知能システムの生存の根本とし、これを脅かしたときにシステムがどういう反応をするかがたくみに描かれている。合理的な推論によって不安、恐怖、怒り「みたい」な反応が自然に創発される様子が書かれている。ただし、人間にははっきり理解できない。まさしく、可能な知能(2004/08/06)の一例が示されていて読んでて楽しかった。