AIルネッサンス
AI奇想曲―「知」の次世代アーキテクチャ (Books in form)
- 作者: 竹内郁雄
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 1992/01
- メディア: 単行本
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少し古い本だけど面白そうなので読んでみた。
本書はコンピュータに関するたんなる啓蒙書ではない。本書は研究者たちに縦書くという制限を課する*1ことによって、逆にイマジネーションをふくらませてもらうことをねらった。つまり、学会誌の論文や解説にはとても書けないような大胆なスペキュレーションを展開してもらうようにした。研究者のフラストレーションの発散の場とも考えたわけである。
p.5
と宣言されてることもあり内容はとても楽しい。でも特にぶっとんでるって話はないと思う。まあ学会誌に比べればイマジネーションはふくらむ話が多いが。
特に面白かったのが中野良平さんのAIルネッサンスだ。中野さんは弱いAIでは飽き足らず、強いAIに興味があると宣言している。強いAI、弱いAIは、人工知能ができない理由(2002/5/28)で書いたのだがこの本に載ってるのはちょっと定義が違うな*2。
- 強いAI(strong AI)
- 科学的AIとでもよぶべきもので、人間レベルの知能を人工的に実現しよう、実現できるとする立場である。
- 弱いAI(weak AI)
- 工学的AIとでもよぶべきもので、人間の知能のはたらきを増幅・支援しよう、いいかえれば知的なテコをつくろうとする立場である。
p.14
となってる。中野さんによると、弱いAI研究は輝かしい成果*3を残しているが、強いAI研究では重要な進展はほとんどなく現在も暗黒時代だと言う。現に強いAIの研究は現在では一部の研究者を除いてほとんど行われていないという悲しい現実がある*4。
強いAIの歴史をふりかえると、本来の目標はまったく達成されておらず、いろいろ試してみてそのつど苦渋を味わったが、今やどうしていいかわからないという状態だ。AI分野を創設した巨人たちも意気が上がらないように見える。現在、強いAI畑はリーダー不在の状況にある。いや強いAI研究は、じつは創設以来ずっと光の見えない暗黒時代にはいったままではなかったか。
p.23
中野さんは暗黒時代を抜け出すための光明を見出す目論見として4つあげている。
- 仮想から現実へ
- 仮想的なおもちゃの世界ではなく、現実世界でリアルタイムに動けるAIを作ろう。
- 無体から有体へ
- 知能は身体と切り離すことはできない。身体が持つ現実世界とのインタフェースに応じて、その身体に特有の知能が育つ。
- 還元から全体へ
- 知能は還元論では捉えられない。相互作用を含めた全体論で理解する必要がある。また、人間レベルの知能の全体を捉えるのは難しい。低次の知能から徐々にレベルを上げるアプローチがよい。
- 無恥から内省へ
- 自分自身を内省するメタの視点を備えたアーキテクチャが必要。自分自身を変えていく能力が必要。
今ではよく言われていることかな?3つめと4つめは私も重要だと考える。身体性の重要性はよく言われてるけど、まだ心のそこから納得できてはいない・・・
私が生きている間に暗黒時代をぬけてルネッサンスに突入できるだろうか。