人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

自由意志のパラドックス

スピリチュアル・マシーン―コンピュータに魂が宿るとき

スピリチュアル・マシーン―コンピュータに魂が宿るとき

という本を読んでいたら、炎は存在するか?(2005/7/26)に出てきた自由意志を扱った話題があったのでメモ。

自由意志の概念はいっそう難しいパラドックスだ。自由意志とは、意図的行動と意思決定である。プラトンは、因果という固定的、決定的な規則にもとづく一種の「粒子物理学」を信じていた。しかし、もし人間の意思決定がそのような予測可能な基本粒子の相互作用によるものだとすれば、人間の意思決定も予測可能なものでなければならないが、そうだとすると、選択の自由と矛盾してしまう。自然法則にランダム性をもち込めば、意思決定と行動が前もって決定しているという問題は消えるが、ランダム性には意図的なものは何もないのだから、今度は自由意志の意図性と矛盾してしまう。

pp.93-94

昔から疑問だったのだけど、上の赤字の部分は本当に正しいのだろうか?コンピュータはしろといわれたことしかできない(2002/9/10)でも少し書いたのだけど、いくつか疑問があるのでまとめておきたい。

  1. 決定的な規則に基づきながらも結果が予想できないものは作れるか
  2. 規則性とランダム性の中間の状態は取れないか

たぶんだけど・・・2番目の答えがキーになりそうな気がする。前に量子力学をちょっとかじったのだけど、光は粒子であって波であるとか、観察者によって粒子の状態が変わるとか普通の人には想像もできないすんごいことが起きてるらしい。あと複雑系とかカオスとかなんか理解するのが難しい分野で解決されるのかなぁ。

自由意志の問題とは離れるが、人工知能を創るという点では1番目が重要に感じる。これは、世界の複雑さを利用すればよいのかな。世界は決定的か非決定的かはわからないが少なくとも今の人間にとっては十分非決定的だ。予測不可能だ。環境との相互作用からの学習など世界の非決定的な情報を取り入れれば、決定的な規則(プログラム)に基づきながらも結果が予想できないものが作れるかも。私が機械学習に興味を持ったのはまさにこの点だ。