人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

エンターテイメントコンピューティング

に行ってみた。今日はエンターテイメントコンピューティングってセッションを聴きに行った。

基調講演は中津良平さんによる「エンターテイメント研究の方向」ってお話。人工知能学会誌2004年1月号に「エンターテイメントにおけるAI」って特集があった。その中の「エンタテイメントとAI」っていう中津さんの論文を予め読んでいったがそれと内容は一緒だった。

エンターテイメントってのは工学の応用領域としては有望だが遊びということで正面きって研究しにくかったという背景があったらしい。だが、なぜか近年になって注目を浴び始め日本でも海外でも研究が盛んになってきたようだ。2002年に国際会議(IECE: International Conference on Entertainment Computing)もできている。

エンターテイメントっていうとテレビゲームみたいなのが真っ先に思い浮かぶけど、研究対象は、スポーツ、アート、演劇、ボードゲーム、エンターテインメントロボットなど広範囲にわたっているようだ。エンターテイメントコンピューティングってのは、こういう従来のエンターテイメントとIT技術を結びつけ、新しい形のエンターテイメントを発掘するという研究分野。従来の工学が物質的豊かさを目指していたのに対し、工学とエンターテイメントを融合させることによって精神的豊かさを目指したいと話していた。また、エンターテイメントってのは日本の情報産業の最先端(アニメやゲームなどのコンテンツ、ペットロボットなどを指していると思われる)でもあるので「日本発」の新産業にしたいとも話していた(かな?)

中津さん自身もニルバーナテクノロジー(リンク切れ)というベンチャーを起こしてロボットの販売を行っているそうだ。ロボットに実用的な仕事(福祉や介護など)をさせるのはまだまだ難しい。なので、あまりあせらずエンターテイメントなどの分野で広く大衆に認知させてから徐々に普及していった方がいいと話していた。「介護ができますよ」って宣伝しても現実とのギャップが大きく「何だこの程度か」ってことで大衆を失望させ、ロボットブームが終焉してしまうことを危惧していた。前にRobodexに行ったとき(2002/3/29)、広瀬さんが「大衆に過度の期待を抱かせるのはまずい」って話していたがそれと同じ危惧を持っているようだ。人工知能の二の舞は避けなければ!

他にパネリストの方の講演もあった。e-Learningにエンターテイメントの要素を取り入れる。異文化理解をインタラクティブアートで実現する。ウェアラブルコンピューティングにファッション性を取り入れるなどの話だった。中で一番面白かったのがテレイグジスタンスを取り入れたぬいぐるみ。テレイグジスタンスってのは遠くにいるロボットを遠隔操作し、あたかも自分の分身のように操る技術のこと。医療なんかで利用されている。それをエンターテイメントに取り入れた研究例を紹介していた。熊のぬいぐるみを2個用意し、片一方を動かすともう一方も同じように動くっていうもの。他にコンピュータ内の熊をマウスで動かすとそれにあわせてロボットの熊も同じように動くっていうのもあった。実世界とバーチャル世界がつながると何か新鮮(本当にそう感じた!)で面白い。

なんか早稲田でもインタラクティブ・エンターテイメント研究所(リンク切れ)ってのができたらしい。先を越されたってくやしがってた。講義も新設されるようなのでできたら聴いてみたいな。