人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

数学における意味と形

ゲーデル・エッシャー・バッハの第2章。この章ではpqシステムという簡単な形式システムを使って「意味と形式」の違いについて説明している。pqシステムは、

  • (p, q, -) の3つの記号
  • 公理系
  • 1つの推論規則

から成る非常に簡単な形式システム。コンピュータと人間の「思考」の違いを考える格好の材料になっている。

公理系
xがハイフンだけの列であるとき、xp-qx-は公理である。
推論規則
x、y、zはどれも、ハイフンのみから成る特定の列を表すとする。もしxpyqzが定理であれば、xpy-qz-も定理である。

公理と定理の違いは?公理は数学の土台に位置するもっとも基本的な仮定のこと。一方、定理とは公理から推論によって証明される命題のこと。たとえば、上のpqシステムでは、xを-とすると、-p-q--は公理になる。この公理に推論規則を適用すると-p--q---という定理が得られる。さらに推論規則を適用すると-p---q----が得られる。

-p-q--(公理)
-p--q---(定理)
-p---q----(定理)
-p----q-----(定理)
・・・

xを--とすると、--p-q---は公理になる。

--p-q---(公理)
--p--q----(定理)
--p---q-----(定理)
・・・

上の公理と定理の図形をじっと見ると何かに気がつく。私も機械になったつもりでせっせと定理を生成し続けていったのだけど途中であることに気がついた。これは・・・足し算を表しているのだ!-の数を数字、pを+、qを=と読むと足し算になっている。たとえば、--p-q---は2+1=3と読める。「pqシステム」と「足し算」の間の同型対応に気づいたのだ。

数学者が二つの既知の構造の間の同型対応を発見すれば、それは喜びをもたらす。それはしばしば「青天の霹靂」であり、驚嘆の源となる。既知の二つの構造の間の同型対応を認識することは、知識の重要な進歩なのである―そして私は、そのような同型対応の認識こそ、人の心に意味を創造する、と主張したい。

ゲーデル・エッシャー・バッハ、p.66

pqシステムと足し算は本質的に違うのだろうか?pqシステムは意味がない記号処理みたいだけど本当は足し算と同じくらい意味があるのではないか?pqシステムの推論規則が意味を創造することはないのか?

この本ではpqシステムのような記号処理には意味がなく、足し算という現実は意味があるというのが前提で書かれているみたいだけど「意味がある」と「意味がない」の境界があいまいだ。意味の意味がわからないなぁ。こーいうの考えてると頭が疲れる。とりあえず先へ進もう。