人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

パーソナライゼーションによって失われるもの

グーグル・アマゾン化する社会 (光文社新書)

グーグル・アマゾン化する社会 (光文社新書)

今まで読んだWeb 2.0を論じた本の中では一番面白かった。「Web 2.0万歳」ではなく問題点を指摘しているのがよい。集中と分散、スケールフリー・ネットワークとの関係も興味深かった。特にパーソナライゼーションに関する下の指摘は鋭い(孫引きだけど)。

パーソナル化は両刃の剣ではないかということだ。パーソナル化により、顧客が欲しがっているもの(あるいは顧客が欲しがっていると僕らが思っているもの)を与えることはできる。でも一方で、自発性も排除されるうれしい誤算や思わぬ発見といったものはなくなる。これは大きな問題だ。

ジェームズ・マーカム、p.211

環境知能シンポジウム2006(2006/10/3)でもパーソナライゼーション(レコメンデーションも含む)は人間が自由意志を発揮する機会を減らすって言ってた人がいたなぁ。

レコメンデーションは盲目的に従うものでなく参考にするものだから自発性が排除されるとは思わない。世の中には盲目的な人もいるかもしれないけどこれはあくまで使う人の自己責任。

ただうれしい誤算や思わぬ発見がなくなるってのは重要な指摘だと思う。過去の履歴だけを元にお薦めしては推薦されるアイテムが自分の過去の好みに限定され視野が狭くなっていくかもしれない。システムにも偶有性(2005/12/16)が必要だな。まあこれもユーザが自発的に興味を広げればよいだけの話か。