人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

エージェントとは

エージェントは最近AIの中でも流行みたいだが意味がよくわからなかった。「自律的に行動する主体」という認識しかなかったのだが、調べてみるといろいろな意味があって興味深かった。石田さんの論文

石田亨: エージェントを考える, 人工知能学会誌, Vol.10, No.5, 1995

によると、エージェント研究は次のように分類できるようだ。

Autonomous agent
各自の意思決定原理機構に基づき動作する。自律性を強調する場合に用いられる。
Intelligent agent
例えば心的状態(メンタルスペース)を持ち、問題解決や学習機構を有する。知性を強調する場合に用いられる。
Society of mind
知性を実現する機能単位をエージェントと呼ぶ。脳と心の働きが特殊化された機能単位の相互作用で生じると考える。
Multi agent
個々の機能ではなく、協調や交渉などの相互作用を研究対象とする。エージェントは相互作用を生じさせる基本単位。
Software agent
ネットワーク内に存在する自律的なソフトウェアの総称。利用者の電子秘書(代理プログラム)として働く、あるいはネットワーク内でプログラム間の仲介を行う。Network agentと呼ばれることもある。
Interface agent
計算機の新たな利用者インタフェース、利用者とコミュニケーションするソフトウェアがエージェントと呼ばれる。表情を持つなど擬人化されたものも多い。
Believable agent
迫真性を備えたエージェント。情感を持ち(持つように感じられ)、通常のソフトウェアを超えた存在感を有する。
Agent oriented programming
プログラム方法論、および言語。オブジェクト指向の発展型としてエージェント指向を考える。
Mobile agent
ネットワーク内を自由に動き回る機動性を有し、利用者に必要な情報を収集する。
Telescript agent
General Magic社の提供するスクリプト言語およびプロトコルネットワークを通じて送出された遠隔ホスト上で動作するプログラム(遠隔プログラミング)がエージェントと呼ばれる。

と、いろいろな意味がある。自分は、Intelligent agentの意味に一番近いイメージを持っていた。『エージェントアプローチ人工知能』という本は、人工知能の技術をエージェントを中心としてまとめていて、他の教科書と趣きが違う。

エージェントアプローチ人工知能 第2版

エージェントアプローチ人工知能 第2版

人工知能は分野が細分化され、各分野が独立して存在するような状況だが、もし「人工知能」を創りたいならそれらを統合しなければならない。その中心としてエージェントが存在するように思える。

Society of mindの考え方は、ミンスキーさんの書いた『心の社会』という本で知った。

心の社会

心の社会

心は心を持たない単純なエージェントが集まり協調動作をすることによって起きるという考え方だったと思う。かなり抽象的なのだが考え方は面白い。

検索は最近のAIの研究として取り上げられることが多い。エージェントの応用分野としても、Webを主とするネットワークでの利用が多い。検索の中でもWebを巡回するロボットが最も興味あるところだが、どうなっているのか知りたい。これは、一種のエージェント(Software agent、Mobile agent)だろう。Webページを集めると聞いたが、実際はどんなことをしているんだ?学習したり、プラニングしたりするような自律性とあるのかな。

あとコンピュータウィルスも興味深い。適応して、学習して、自律性を持ったコンピュータウィルスが現れるかもしれない。今のコンピュータウィルスの機能とか構造とか調べるのも面白いかもしれない。逆に、コンピュータウィルスを退治する免疫細胞なんかの研究もあるみたいで興味深い。