光のロボット
- 作者: バリントン・J.ベイリー,Barrington J. Bayley,大森望
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1993/11
- メディア: 文庫
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ロボットの魂(2005/09/15)の続編。
世界最高の論理的知性を持つロボット・ガーガンが、人間と同じ意識を獲得しようとするお話。面白いには面白いけど前作ほどおぉーと思うところがなかった。
とはいえ、ガーガンがある方法を使って意識を獲得する場面はとても印象的だ。
わが計画の兄弟たちよ、超越的光に照らされたこの状態を説明できる言葉はない。それは、新たに存在をはじめることだ。いままでのわたしは虚構でしかなかった。本に書かれた言葉―閉じられたまま、だれひとりとして繙いたことのない書物の中の言葉にすぎなかった。いま、その本が開かれた。そして読者がいる。このわたしが読者であり、同時にその書物でもある。わたしは自分が意識していることを意識する。意識を欠いたままの数十年の思考にくらべれば、啓示を得てからの数秒間は一時代にも匹敵する。なぜなら、死の世界に時間はないからだ
p.293
かなりうまいアナロジーだと思った。たとえば、本に書かれた言葉っていう表現は、今までは単なる記号処理による思考に過ぎなかったっていう意味に読み取れた。あと、「読者でもあり、書物でもある」は意識の自己言及性を表すうまいアナロジーだと思う。
意識を超越的光、聖なる炎のような火のアナロジーで表現している点は興味深い。また、意識を持つ人間と持たないロボットをゾロアスター教(拝火教)のアフラ・マズダ(光)とアーリマン(闇)の対立と捉えている点も面白い。最初なんでゾロアスター教が出て来るんだと思ってたけど、けっこう深いところまで考えられているんだなと感心した。
ところで、意識や魂を火のイメージで捉えるのは全世界共通なのだろうか?日本だと人魂は炎だし、寿命は蝋燭の火で表現されることが多い。海外でも同じなのだろうか気になった。