Googleの好きなところと嫌いなところ
- 作者: ランダルストロス,Randall Stross,吉田晋治
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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Googleが今まで立ち上げてきたプロジェクト(検索、ブックサーチ、YouTube買収、Googleアース、ストリートビューなど)の舞台裏が書かれていて興味深かった。Google礼賛本にはあまり書かれていないような視点が多く、こういう見方もあるのかという発見が多かった。
私もGoogleのサービスはほとんど使ってるし、なくなるとすごく困るし、好きなところもたくさんある。たとえば、
- 社是で壮大な野望をかかげるところ
- 短期的な成果より長期的な視野を持っているところ
- アルゴリズム至上主義(人工知能の研究者はみんなガンバレって言うと思う)
- 大規模情報処理という専門分野(Googlersの論文はチェックしてる)
- 20%ルールとかボトムアッププロジェクトを推奨する社内環境
- エイプリルフールの壮大なジョーク(笑)Google CADIE(2009/4/1)
でもその一方であまり好きでない(=自分の思想と異なる)ところもある。
- 市場で圧倒的なシェアを確保しているところ
- すべての情報を一元管理するという情報整理のアプローチ
- SaaS、クラウドコンピューティングの推進
一元管理はアクセスが用意だし、低コストだし、セキュリティ管理もしやすいなどさまざまな利点があるのは認識しているし、SaaSやクラウドコンピューティングの恩恵は最大限活用させていただいている(笑)けれどすべてをコレに置き換えていく気があるのはちょっとヤだなーと思う。
前にも何度か書いたことあるけれど、私は分散処理の可能性に惹かれる。Googleだってデータセンターの100万台のサーバーですでに分散処理やってるじゃないかって?そうじゃない、ここで言う分散とは広域分散処理のこと。世界中のネットワークでつながれた普通のコンピュータでの分散処理だ。P2PとかSETI@HomeとかFolding@Homeみたいなの。
データセンターのサーバー群で高度な情報処理は全部引き受けますんでクライアントは薄っぺら(Thin)でかまいませんってのはP2Pやグリッドコンピューティングの芽を摘んでしまうんじゃないかってちょっと危惧してる。
クラウドコンピューティングの推進は、我々から計算する力を奪い取って骨抜きにする陰謀(笑)じゃないかとか思う。雲の上からすべてお膳立てしますので下々のユーザ様は何も考えずにこちらで用意する恵みの雨を受けてください、みたいな?クラウドコンピューティングのクラウドはインターネットが雲みたいなもくもく記号で描かれることから来ているみたいだが、「雲の上から」みたいな神様ぶったこと考えてるんじゃないかとついつい邪推してしまう。まあ私は全部クラウドに置き換わるなんて思ってない、Googleは100万台のサーバーを持ってるだろうけど全世界にはすでに10億台のパソコンがあるしね!(参照)
P2Pを研究している人はクラウドコンピューティングに対してどう感じているんだろう。グリッドを実現する第一歩みたいな感覚なのかな?でも薄っぺらなお友達(ピア)ばかりになっちゃったら困るよね。あとPCメーカーも困るし(笑)
あともう一つ考えていることがある。コンテンツの提供者が正当な利益を得られる仕組みが実現できないのだろうか?私が言っているコンテンツの提供者は巨大メディア企業のことではない。Webサイトの著者、Youtubeやニコニコで面白い動画をアップロードする一般の人たちのこと。確かにアフィリエイトとかコンテンツ作成者に還元する仕組みはできているけど地主の中間搾取が多すぎやしないか?広告主と一般ユーザを直接アルゴリズムで自動化してつなぐことで地主の圧倒的な搾取から解放するすべはないのだろうか?私は利益を追求する立場にある企業という形態ではこのような仕組みは作れないと考えている。企業に頼らずにそういう仕組みを構築するすべははたして?
Googleを名指しで批判したみたいに思うかもしれないけどそうではない!何か世の中の流れが自分のヤな方に行きそうだなーとかそんな程度。Googleのリンクに反射的にマウスカーソルが行くくらい使ってますし、その他のWebサービスも大好きです。
関連リンク
- Google人類脳計画(2006/3/17)