本能はどこまで本能か

- 作者: マーク・S.ブランバーグ,Mark S. Blumberg,塩原通緒
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/11
- メディア: 単行本
- 購入: 4人 クリック: 49回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
本能という言葉は、科学的には少なくとも九つの意味をもっている。
- 生まれた時点で(あるいは特定の発達段階で)存在するもの
- 学習されないもの
- 使われるようになる前から発達しているもの
- いったん発達すると変わらないもの
- その種に属する全員(少なくとも同じ性別、同じ年齢の個体ならすべて)が共有するもの
- 独特の行動システム(たとえば狩猟採集など)に体系化されるもの
- 独特の神経モジュールの支配を受けるもの
- 進化の過程で適応するもの
- そして、保持する遺伝子の違いによって個体ごとに差が生じるもの
これらのうちの一つの用法が、かならずしも他の用法を含意するとは限らない。ただ一般には、なんの証拠もないのに、当然のようにそう思われているだけだ。
p.31
そう思ってました・・・
この本では従来、本能的な行動と思われていたものが実は経験、環境要因によって獲得される行動であることを示す例がたくさん載っている。たとえば、「のどが渇くと水を飲む」と言った本能っぽい行動も実は学習によって後天的に獲得される証拠を示している。そのほかにもローレンツのいう動物の本能やチョムスキーの言語モジュールにも批判を加えている。
この生得か学習か、氏か育ちかの問題は根が深く昔から対立があったようだ。前に書いた合理主義 VS 経験主義(2005/7/12)の対立も根は同じなのか?
そもそもこういう派閥ができること自体問題なのかも。どっちかの派閥に入ってしまうとその派閥を守る立場で偏見ができてしまう。派閥を作るのは人間の本能*1なのかな?生物学とか心理学の本を読むときはどの派閥の人が書いたものか明らかにしないと見方が偏りそう。というか逆の結論出してるから混乱してしまう。今までの議論の流れをわかりやすくまとめた本がほしい。
*1:こんな風に安易に本能を持ち出してそこで思考停止することを著者は戒めている。