「自己」複製のパラドックス
2050年、人間は「不死身」に=脳の中身をPC保存(2005/5/26)の続き。
自己複製は自分で自分を複製することだけどここで言ってるのはそれじゃない。「自己」の複製のこと。自己ってのは心理学の正式な用語じゃないみたいだけど自分を自分であると感じる感覚という意味で使ってます(言葉で説明するのすんごく難しいけどわかりますよね?)。心のはたらきの一種。
心は脳(物質)から生じるのか(一元論)、脳(物質)を超越した魂があるのか(二元論)は昔から問題になっている(心身問題)。デカルトが二元論を主張してたのは有名。今は脳の研究が進み心は脳から生じていると考える一元論が大勢。魂なんか信じてたら変な宗教かと怪しまれちゃいますね。だけど心(とその働きである自己)が物質から生じていると仮定すると変なパラドックスが生じる・・・
ここに脳のすべての物質(ニューロンのつながりもすべて)をスキャンして全く同じ複製を作る装置があると仮定する。これをあなたに使用してもう1つ全く同じ脳を持った人間を作る。このとき「複製されたあなた」は「あなた」なのだろうか?心と自己が物質から生じていると仮定すると「複製されたあなた」は「あなた」と全く同じ心と自己を持っているはずだ。だけどあなたが自分が自分であると感じる自己の感覚が2つ同時に存在するとはどうしても考えられない。「複製されたあなた」は自分ではなく別の他人だと感じるはずだ。
ここにパラドックスがある。つまり、一元論では自己を複製できないんじゃないかって疑問が生じるのだ。この問題は昔知ったときすごい不思議な感じがした。かなり考えてたのだけど説明する方法が全く思いつかない・・・やっぱり二元論もありえるのかなと思ってしまう。もう哲学とか心理学では解決されてるのだろうか?脳を複製できるとする仮定そのものがどっか間違ってるのかな?想像できても創造できない種類のものだろうか?自己は幻なのだろうか?
このパラドックスは『マインズ・アイ』という本にもっとわかりやすく、詳しく書かれてるので読んでみると面白いです。
- 作者: ダグラス・R.ホフスタッター,D.C.デネット,坂本百大
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 1992/11
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