人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

情報装置としての人間

新聞のTV欄見てたら、放送大学(家では5ch)で「情報装置としての人間」というのがやっていたので見てみた。たった45分だったけどかなり面白かった。講師は植田一博さんと佐倉統さん。佐倉さんは何かの本を読んだので名前は知っていた(結構若い人なんで驚いた)。

内容は、人工知能と認知科学の歴史的流れみたいなもの。その流れは、

論理・推論装置としての人間
推論とか三段論法とかそういうのが重視されていた。
知識依存アプローチ
厳密な推論や論理というものは通常の人間が使っているとは考えられない(4色カード問題の実験から)。人間の推論は過去の記憶とか経験に基づいた知識に依存した推論を行っているというのが中心。で、知識重視がずっと続いて、知識獲得、学習が問題になった。知識はどうやって獲得するのか?こういう話題は従来の機械学習で行われている。
生物アナロジ
3番目の考え方は、生物アナロジに基づくもの。別の学習方式。生態情報処理を重視し、ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムがある。「遺伝的アルゴリズム(進化)は、学習とは違うんじゃない」という疑問には、タイムスパンは異なるが、生物が環境に「適応」するのは学習と見なせるという話だった。たぶん、強化学習もここに入ると思うけど、指摘はなかった。マイナーなのか?

で、植田さんの研究分野として「人工市場」の話があった。確か、人工知能学会誌に特集があったような・・・仮想的なエージェントを複数集めて(つまり、マルチエージェント)、がやがややらせると、現実の市場と同じ現象が再現できるというような話。確か、複雑系(2003/1/16)を読んだときにも経済学と複雑系の話が出てきていた。経済のシミュレーションみたいなの。

で、この講義の最重要点は、「人間の認知モジュールに、生物としての知能を考える」という流れが最近出てきているってこと。要するに「情報処理アナロジから生物アナロジへ」とまとめていた。佐倉さんも言っていたけど、人間は動物なんだから、人間の知能の研究として動物(人間以外の生物)の知能(環境に適応するとかそういうことだろうか?)を調べる必要がある。言われてみれば当たり前だが、今までほとんどの人が気づかなかったらしい。今まで研究されてきた情報処理アナロジと生物アナロジの共存は可能だと植田さんは言っていた。どうするんだろう。生物アナロジと従来の知識重視のアプローチの融合点はどこにあるのだろうか。結構面白いテーマかも。

放送大学って結構面白い講義がやっている(早稲田にないようなやつ)。この1回前は、どうやら身体性認知科学がやっていたらしい。見れなかったのが悔やまれる。明日から毎日チェックしとこう。