人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

発達の本質

2005年7月号の人工知能学会誌(pp.500-501)に面白い記事があったので紹介したい。著者は小嶋秀樹さん。AAAI Spring Symposium: Developmental Roboticsという会議の会議報告を書いている。

Developmental Roboticsというのは訳すと発達ロボティクスとなる。近年、知能には身体が必要だという身体性と関係して人工知能・ロボティクスの分野で流行している考え方だ。

日本だと大阪大学の浅田さんが提唱した認知発達ロボティクスが有名。

この記事の面白いと思ったことは、発達の本質は何か?という問題。早速だけど考えたことを交えて引用しよう。

あらかじめ与えたゴールやタスク(あるいはその達成度を表す評価関数)をロボットに探索・学習させ、そのアルゴリズムや効率を問うだけでは、ロボットを<発達>させているとはいえない。

強化学習を例にとる。強化学習は、報酬をゴールとしてロボットに探索・学習させる手法だ。純粋にアルゴリズムとして見れば多くの利点があるため実用化を目指して高速化に関する研究が盛んに行われている。ただ、強化学習を動物のアルゴリズムとしてみた場合は根本的に不十分なところがあるように私も感じている。

<発達>の本質は、何かを求めて外に向かおうとする力が、未知環境とぶつかり、絶え間なく自分自身を変えていくプロセスにある。

(中略)

高等動物(特にヒト)の<発達>は「何かを求めて外に向かおうとする力(=自発性)」によって駆動されたopen-endedなプロセスとしてモデル化されるべきであり、ロボットの<発達>もそうあるべきだ。

激しく同意。私は何かを求めて外に向かおうとする力(自発性)のことをかっこつけて心の燈火(2005/6/13)って呼んでる*1。ここで、心の燈火は実際には何なのかが問題となる。

続きは明日。

*1:オリジナルじゃない。昔、どこかで読んだ単語なのだがどこだっけかな。