人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

ブライテンベルクビークル

知の創成でブライテンベルクビークルという面白いロボットが紹介されていた。ブライテンベルクは脳研究者で簡単なロボット(車輪とセンサしかないようなもの)を考えて思考実験を行った。その結論は、

きわめて単純な脳であっても、外部の観察者からは非常に洗練した振る舞いとして映るような出力が可能である。

知の創成(p.186)

たとえば、ビークル2号は下図のように車輪が両側に光センサが前方についているロボットである。光センサで光が強く入るほどつながった車輪が早く回るようになっている。そして、ビークル2a号はセンサと車輪をストレートに、一方、ビークル2b号はクロスにつなげている。この2体の動作を考えてみると面白い。

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2a号は光源に近い方の車輪が速く回るから光源を避けるようにふるまう。一方、2b号は光源に遠い方の車輪が速く回るから光源に近づくようにふるまう。

結局、何がすごいかと言うと、ビークルの構造は驚くほど簡単なのにそれを外部から見ると思いもよらず不思議な振る舞いをする点。このロボットを外部から見るとビークル2a号は光を怖がる臆病なロボットにビークル2b号は光に突撃していく攻撃的なロボットに見えるはずである。

臆病や攻撃的に見えるのにその仕組み・知識はロボットの中には実装されていない。ロボットは単に「センサとモータが連係して動き、センサ、モータを通して環境と相互作用している」にすぎない。それだけでこんな知的な動作をする。

ブライテンベルクビークルは全部で14台ある。このような簡単な枠組みで回遊、接近と障害物回避、臆病、攻撃的、手助け行動、魅力、価値と嗜好、進化のように驚くべき能力が創発する。

人間や動物の行動は驚くほど複雑に見えるけど、もしかしたら内部のメカニズムは思っているより簡単なのかも・・・と思えてくる。

模型は心を持ちうるか―人工知能・認知科学・脳生理学の焦点

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