人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

森羅万象解き明かす

最近、更新をさぼっていたけどまた再開することにした。ちょっと古いが8月20日の読売新聞に面白い記事が載っていた。ウルフラムという人が書いた『A New Kind of Science』という本についてでその内容が興味深い。

A New Kind of Science

A New Kind of Science

著者のウルフラムさんの名前はどこかで聞いたことがあると思っていたら、Mathematicaを作った人だった。その記事を一部引用。

新理論を要約すると、自然界で複雑と見える現象はすべて、単純な法則に基づく計算の繰り返しによって成り立っているという。

この考えが正しければ、自動車の渋滞から生命の誕生、宇宙生成の仕組みまで、森羅万象はすべて簡単なコンピューター・プログラムで記述できる可能性が出てくる。

ウルフラム氏の理論の基礎を成しているのは、セルオートマトン(CA)と呼ばれるコンピューター・プログラムだ。単純な変換ルールを連続して適用していくことによって、チェス盤のような格子状のパターンが様々に変化するシステムのことで、近代コンピューターの父と呼ばれるフォン・ノイマンらが考案した。

CAは単純な約束事の繰り返しにすぎないが、ルールを少し変えるだけで、雪の結晶や貝殻のような複雑な模様を描くことができ、また交通渋滞のよい近似モデルも作ることができる―八〇年代前半にこうしたルール作りの基本型を提案したのが、ウルフラム氏だ。CA研究はその後、物理学者や数理工学者らの間でブームとなった。

自然科学では、現象を把握するのに、微分方程式などを活用してモデル化し、分析する手法を常とう手段としてきた。しかし方程式による近似解が適用できるのは通常、その現象に限られる。

ところがウルフラム氏の理論は「CAは多岐にわたる減少の普遍的なモデルになる」としており、同理論が、微分法を発明したニュートン以来の科学的方法論への挑戦、と評される根拠もここにある。

提唱者が他の人物なら、単なる「たわごと」と片づけられたかもしれないが、天才の名をほしいままにしたウルフラム氏なので、科学界も無視できない様子だ。

本当だったら面白い!特に「複雑な現象はすべて単純な法則に基づく計算の繰り返し」というのは、「創発」のことを言っていると思われる。いつか人工知能の方針も簡単な要素の組合せによる創発に移るかもしれない。でも、「普遍的なモデル」ってあるのだろうか。物理の究極原理の「大統一理論」みたいなものなのか。