人工知能に関する断創録

このブログでは人工知能のさまざまな分野について調査したことをまとめています(更新停止: 2019年12月31日)

ROBODEX2002の見学

今日は、パシフィコ横浜で開催されているROBODEX2002というロボットの博覧会を見学してきた。雨なにの満員で盛況ぶりが伺えた。まあ、「AIの体だから」見ておこうかと思ってはるばる横浜まで行ったけど行っただけの価値があったと思う。

まず、「アシモ」というホンダが開発したロボットには驚いた。ついこの間?までは二足歩行は難しくてまだまだできないと聞いた気がしたのだけど勘違いだろうか。アシモが歩いて手を振ったりするのをずっと見てたんだけど、中に人が入っているみたいであまり違和感がなかった。次に、SONYの名前は忘れたけどパラパラダンスを踊るロボットが出てきた。動きの滑らかさはこっちもすごいと思った。

他にもたくさんロボットがあったけど、一つ気になることがあった。ロボットが本当に感情を持っているように「見せすぎ」じゃないか。実際、今日のデモとかを見ていると、ロボットが意識、感情などを持っているように「見える」ものがたくさんあった。例えば、アシモって観客に向かって手を振ったりしていて、あたかも自発的に動いているように見えたけど、あれ実はプレステ2のコントローラみたいので人間が動かしていた(動かせるっていうこと自体すごいけど)。

SONYの踊るロボットも観客の人と「自発的に」うまく会話したりやりとりしていて、本当に「心」があって会話能力があるように見えた。このロボットは誰かが操作しているのか自律型なのかは分からなかったけど、お客さんの中にはロボットが「心」を本当に持っていて、コミュニケーションができると勘違いしてしまった人も大勢いるんじゃないかなと思う(まさか自分が勘違いしているなんてことはないよね)。講演で東工大の広瀬さんが話していたけど、大衆に過度の期待を持たせるのはまずいみたい(理由は何でだっけ・・・)。

他に、講演があったので聴いた。一つ目は「ロボットとヒト その知能と心 〜知能研究の最前線で、2人の研究者が得たものとは〜」という題名のもの。題名からして面白そうと思った。ここで、印象に残ったのは、「ロボットは多機能な機械であるが、産業の観点で見ると単機能の機械にはコストの面で到底及ばない」という話。ヒューマノイド型のロボットは視覚、音声認識、手、移動など様々な機能を持っている機械だけど、それぞれの機能に特化した機械(例えば、手なら工業用のアーム)には到底及ばずヒューマノイド型ロボットの産業的な利用価値は低いという意見だった。そして、利用価値のある分野を3つ挙げていた。

  1. エンターテインメント用、ヒューマノイド型のロボットは人間にとって親しみが湧きやすいという理由。
  2. 究極の携帯端末、携帯電話はせいぜい視覚と聴覚しか利用していない携帯端末(物理的な距離を越えられる)だが、ヒューマノイドロボットを自分の分身(つまり、もう一人の自分)として自由に操作してロボットが感じた全ての感覚を人間に伝えようということ。
  3. 脳機能の解明。ロボットを作り動かすことによって人間の脳機能を理解するという話。従来のAIは体を持たなかったが、本来「脳と体は不可分」な関係だという主張だった。

もう一つ講演を聴いた。「ヒューマノイド VS メカノイド 〜あなたなら、どちらのロボットを研究しますか?〜」という題。ヒューマノイドの研究者として早稲田大学の高西さん、メカノイドの研究者として東工大の広瀬さんがトークバトルを行った。ヒューマノイドというのは「人間の形をしたロボット」のこと。メカノイドというのは造語らしいが「機械らしいロボット(例えば、蛇型とか蜘蛛型とか」。早稲田がロボットが有名という話は聞いていたけど、ヒューマノイドの研究では世界一のレベルらしい。残念だけど、広瀬さんの方が話し方が上手で早稲田はちょっと負けていたように思う。

広瀬さんは「ヒューマノイド批判」をした。それは、いつかヒューマノイドができても現実的な実用価値はほとんどない。それぞれの目的に特化した形を持つ「メカノイド」の方が現実的だということ。例えば、掃除をしてくれるヒューマノイドがたとえ出来たとしても、掃除機自体を知的にした方がコスト的に安上がりだ、また災害救助において一体何億もするようなヒューマノイドがいるよりも、蛇型のような細い隙間に入れるようなメカノイドの方が安くて便利という感じ。それに、企業はロボット研究者に何度も裏切られて、ロボットという言葉に拒否反応を起こしている。今はヒューマノイドを考えるより、地雷撤去ロボットとかもっとすぐに結果が出せる実用的なものを作るべきと主張。

それに対するヒューマノイド擁護として、ヒューマノイドは人間の体を理解するのに役立つ。現に、義足などはヒューマノイドの技術が使われているし、顎の病気の人にヒューマノイドで得られた技術を応用することによって治療に成功したという話などを出していた。また、なによりインターフェイスとして人に親しみを感じさせるなど。

どちらの先生も互いの研究を真っ向から批判しているわけではなく、互いに理解しているようには感じた。この議論を聞いていて、AIもハードとソフトの違いだけで同じ話だなと感じて、考えさせられることは多かった。

帰りにアイボが売っていた(始めてみたけど新型の丸顔の方は結構可愛いと思った)んだけど、高くて買えなかった・・・代わりに「無能系 ピチピチゴンザレス」という虫みたいなのがランダムに走り回るやつを記念に買った。「無能系」というのが何とも言えない良いネーミングだと思う。